来年で、創業80周年を迎える飯田の喜久水酒造(飯田市鼎切石)が年末、80周年記念酒を発売する。
喜久水酒造は1944(昭和19)年、当時飯田下伊那にあった37軒の蔵元が企業合同し下伊那酒造を設立したことから始まる。現在も合同したまま残る飯伊地方で唯一の酒蔵で、全国的にも稀な存在となっている。
80周年記念酒は純米大吟醸無ろ過原酒。同社商品の中では翠嶂(すいしょう)に並ぶ最高級の造り。米は「たかね錦」で35%精米。「フルーティーで、米のうまみが伝わる」味わいだという。同社が復活させ、こだわってきた酒米「たかね錦」は昭和30年代に広く作られていた酒米だったが、美山錦の台頭で徐々に使われなくなってしまったといわれる。杜氏(とうじ)らが「スッキリした飲み口と膨らみのあるうまさが際立つ『たかね錦』の酒の味が忘れられない」と話していたことから、同社が「たかね錦」を復活させた経緯がある。現在はほぼ、南信州で作られているという。
まだ搾りの前で味は確かめられないが、「冷やでワイングラスなど香りを感じられるグラスで飲むのがお勧め」と営業部長の下澤淳志さん。「こだわりの米を使って川口杜氏が手間暇を惜しまず一生懸命作ったお酒。80年の技術を集約した渾身(こんしん)の一本を味わっていただけたら」と呼びかける。
ラベルには、喜久水の旧字「七が三つの喜ぶ」を採用。「昔の人には懐かしさ、若い人には真新しさを感じてもらえるラベルにした」という。
価格は720ミリリットル(4合瓶)で1万円で、製造は300本限定。12月27日ごろの出荷を予定。現在予約を受け付けている。