中村八幡社(飯田市中村)が、飯田市有形文化財で一風変わった姿形の石造こま犬一対を訪れた多くの参拝客に注目してもらおうと、元日の初詣で初めてライトアップした。
寸胴で前足が短く、前方にかがむような低い姿勢が特徴の珍こま犬は普段、同本殿にひっそりとたたずんでいる。飯田市内のこま犬では最古のもので、江戸時代前期の基準作といわれている。一般的にこま犬は雄雌の区別はないが、同社のこま犬は阿(あ)形(雌)と吽(うん)形(雄)の一対となっているのが特徴。寄進者は中村地区ではかなりの有力者だった伊藤十左衛門、伊藤作之丞で、1678年に寄進されたという記録がある。
現在の同社は1701年に再建されたもので、元禄時代にまでさかのぼる。江戸時代前期の本殿とこま犬が一体となって伝えられている例は飯田市内にはなく、こうした背景が評価され2020年1月16日に飯田市有形文化財に指定された。
こま犬は本殿の中にあるため、拝殿からは格子越しにしか見ることができない。同社では貴重な文化財を地域の人たちに多く知ってもらおうと、元日のみ本殿を開放し公開してきたが、今年は本殿の開放は行わず、拝殿から見えるようにとライトアップをした。
元日の初詣に訪れる参拝客は地元の人が多いという同社。この日訪れた地元の高校生は「こま犬のイメージとはかけ離れていて、とてもかわいらしい姿が印象的。もっと注目されてもいい存在では」と、話していた。