国の重要無形民俗文化財で、阿南町新野地区で約760年近く続く田楽祭りの一種「新野の雪祭り」が1月13日~15日、諏訪神社と伊豆神社で行われた。
豊作の予兆とされる雪を稲穂に見立て豊年を願う同祭は、田楽、舞楽、神楽、猿楽、田遊びなどの日本の芸能の数々を、夜を徹して繰り広げる。伝統芸能の原点ともいわれる祭り。13日は、伊豆神社から諏訪神社へ「お下りの渡行」を行い、舞役の「御滝入り」「試舞」などが、14日は再び諏訪神社から伊豆神社へ「お上り行列」を作り、伊豆神社の神楽殿と拝殿で舞や神事が行われた。
14日21時、地元の消防団を中心に息を合わせ、大たいまつを人力とクレーンで立てる。1時間ほどかけて高さ6メートルほどの大たいまつが立つとギャラリーからは大きな拍手が沸いた。15日深夜2時、観客らが神様のいる部屋を「らんじょう、らんじょう」と掛け声を上げながら木の棒でたたき、神様を起こす。庭の大たいまつに神の火が点火されると、この明かりに導かれて、歳神(としがみ)をかたどった幸法(さいほう)と呼ぶ柔らかい表情の面形が登場。赤い頭巾に長いわらの冠、その先に五穀の入った玉を付け、手に松と田うちわを持って小気味よく舞う。拝殿の前で舞い手が何度も姿勢を低くすると、境内を訪れた80人ほどの観客らから「ヨイショー」という掛け声が送られた。舞はおはやしに合わせて三三九度に舞った。
茅野市から友人と訪れた男性は「長年見に来たかった祭りで、実際に見ることができて良かった」、神奈川県から訪れた女性は「初めて訪れた。幸法に触れられて幸福な気持ちになった。途中、眠たくて立ったまま寝てしまった」とそれぞれ感想を話す。
夜を徹して拝殿で笛を吹いていた大学生の金田せなさんは「小学校からずっと笛を吹いている」と言い、「皆で交代しながらやっているが、寒くて眠気が消えた。祭りの雰囲気が楽しくていい」と振り返る。
幸法に続き、小雪降る中、茂登喜(もどき)、競馬(きょうまん)、お牛、翁、神婆(かんば)、てんぐ、鎮めなどの神々の面が次々と現れ、昼前まで舞を繰り広げた。同祭りは、深夜の寒さと、大たいまつの煙たさ、夜通しの眠たさから「寒い、煙い、眠い」祭りともいわれている。