国の重要無形民俗文化財で、天龍村坂部地区で約600年近く続く湯立て神楽「坂部の冬祭り」が1月4日・5日、大森山諏訪神社(天龍村坂部)で行われた。
同祭りは坂部地区に伝わる「熊谷家伝記」によると、1428年に始まったと伝えられている。面型の舞が行われる点から奥三河の「花祭り」が源流ともいわれる。当日は18時から末社の下の森(火王社)から大森諏訪神社までお練りを行い、神社の舞堂内でさまざまな歌神楽や舞を披露した。22時ごろから始まった地区の子どもたちによる「花の舞」は4人の子どもらが8種類の舞を約2時間かけて披露。舞の最後に「かーやせ、かーやせ、清めてかやせ」という掛け声とともに訪れた観客と舞台が一体となり盛り上がる。
天龍村坂部の在住の村澤雄大さんは「花の舞」を踊った小学2年の長男、玄埜(げんの)くんを「遅い時間で長い舞だったのでいつバテてもおかしくない様子だったが、本人も好きで楽しくやっているので全て任せて見ていた」と話す。
祭りに参加した神子(かみこ)は、地元坂部5人。同村関係者10人。初参加の女性3人を加え、18人で執り行った。さらに国学院大学、横浜国立大学、栃木短期大学の学生有志も近9年ほど祭りの体験に来ているという。同神社氏子総代の平松雅隆さんは「地域おこし協力隊など若い人が協力してくれるのでありがたい」と話す。「子どもの頃から見ている祭りで、これがないと一年が始まらない思い。冬至の生命が弱まる時期に復活を祈る儀式で、神様と人との誓約を意味する三々九度の祭りでもある」と祭りの魅力を話す。
会場では地元の特産品を使ったみそ汁や白米の振る舞いもあり、冷え込む中、多くの人がたき火を囲み身体を温めながら祭りを楽しんだ。5日午前6時ごろから始まった祭りのクライマックス「たいきり面の舞」では全身赤色の「道開け様」といわれる鬼がたいまつの火を振り払いながら踊る豪快な舞を見せ、観客からは大きな拍手が送られた。近年は地域外からも訪れる人が増えており、今年は4日夕方から5日昼まで延べ200人ほどが訪れた。
豊川市から訪れ今回が2度目という男性は「昨年も見学したが、とても楽しい祭りで来て良かった。クライマックスの『たいきり面の舞』の場面も良かったが、子どもたちの『花の舞』の後の『かーやせ、かーやせ』のかけ声で観客と一体となるのがとてもいい」と話していた。