茶室「曙月庵(しょげつあん)」(喬木村阿島)で10月11日~13日、伝統工芸品の「阿島傘(あじまがさ)」の展示を行う。
曙月庵は江戸時代の1848年に知久氏十代の頼匡(よりくに)が陣屋を築いた際に造営したもので、「知久陣屋御殿茶室 曙月庵」が正式名称。茶室としては珍しい2階建てで、明治以降の改造が少なく貴重な建造物として現存する。
当日は、元地域おこし協力隊で「阿島傘一凛」の水谷槙さんらが制作した傘30本ほどを建物内と庭に並べる。日没からライトアップも行い、竹灯籠と共に幻想的な雰囲気を演出する。水谷さんは「SNS映えするので写真に撮って多くの人に阿島傘を広めてほしい」と来場を呼びかける。「阿島傘も曙月庵も知久氏が絡む江戸時代のもので、歴史的背景も知ってもらいながら、展示を見て阿島傘にも触れてほしい」とも。
阿島傘は今年9月、長野県知事指定伝統的工芸品に選ばれ、より一層伝統の継承に力を入れる。時期を同じくして、地域おこし協力隊の小林旅人さんが阿島傘の本「和傘ってどんなもの?阿島の和傘編」(非売品)を制作し、村内の小中学校や図書館ほか、周辺市町村の図書館や学校などに配布した。284ページにも及ぶ本の内容は、阿島傘の絵柄などの写真で始まり、歴史、文化、作り方、素材、祭りなどの地域行事との関わりまで阿島傘のあらゆる背景を調べ、2年半かけて制作したという。「子どもたちに正しい知識を伝えていくのが大人の責任」と小林さん。小学生でも読めるように全てにふりがなを振った。小林さんは「自分たちが引き継いできた文化がすごいものだと自覚して、次の代の人に間違いないように伝えてくれることを願っている」と思いを話す。「私がいなくなっても阿島傘が伝承できるような内容」とも。今年7月から「阿島傘」の後継者育成講座「本気で和傘を極める」を開講し、伝統技術の継承に尽力する。
開催時間は13時~20時。ライトアップは日没から。入場無料。