飯田市史美術博物館(飯田市追手町2)で現在、「春を彩るスミレ」展が開催されている。
同展は、同館で自然分野を担当する学芸員、四方圭一郎さんが初めて企画した。「春は桜を楽しみにする方が多いが、足元に咲くかれんなスミレの姿にも着目してほしいと思い、改めて南信州などのスミレを調べることにした」という。
スミレの背丈は5~10センチほど、花の大きさは1~2センチほどと小ぶりで、5枚の花びらで構成する。生息地は高山帯、人家周辺、特殊な環境とさまざまで、花が開くのは数日程度のため開花時の写真撮影は難しい。生息地の情報を集め、確実にあるとされる環境へ出かけ、花の開いている姿を捉えた。四方さんは県内を中心に約40種類のスミレを、2019年~2021年の3シーズンかけて撮影。「経験と知識を積むと種類が分かる」と笑顔で話す。
パネルにしたスミレの中には、石川県の砂浜にだけ咲く「イソスミレ」や、滋賀から福井県にかけての標高1000メートルの地点だけに咲く「ツルタチツボスミレ」など、県内では見られない品種も。紫、ピンク、白、黄と、色鮮やかなスミレがパネルに並ぶ。その他の写真パネル8枚と、スミレの解説パネル9枚、押し花標本12種もそろえた。解説パネルでは、スミレの生存戦略も学べる。花を咲かせていない時季にも種をつけたり、種を運ばせるためにアリを利用したりするという。
ガを専門に研究する四方さん。ライチョウや高山植物など動植物の別種類も調査・研究。「数多く調べることでスキルも上がり、春を感じるスミレは癒やしになる」と四方さん。「スミレの視点を通すと、身の回りの景色が一変する。社会も、自然も、ちょっとだけ見方を変えると、違う世界が見られる。それが面白い」とも。
開館時間は9時30分~17時。月曜休館(祝日の場合は開館)。観覧料は、一般=150円、高校生=100円、小中学生=50円。5月29日まで。