見る・遊ぶ 学ぶ・知る

飯田市美術博物館で明治期の画家・菱田春草展「菊慈童に迫る」

展示室内の様子

展示室内の様子

  • 0

  •  

 明治時代を代表する日本画家・菱田春草の第37期展示「菊慈童(きくじどう)に迫る -春草と朦朧(もうろう)体-」が9月3日、飯田市美術博物館(飯田市追手町、TEL 0265-22-8118)で始まった。

菱田春草記念室

[広告]

 飯田出身で明治期以降の日本画家として最も多い4点の作品が国の重要文化財に指定されている菱田春草。若き日の春草の代表作「菊慈童」に焦点を当て、明治30年代初頭に、春草ら日本美術院の作家たちが試みた空間表現を紹介する。「菊慈童」の他に春草の作品や、同時期の日本画家・横山大観や西郷弧月の作品と関連資料など約20点を展示する。

 1900(明治33)年の作品「秋渓(しゅうけい)」は、春草が日本美術院に所属し新しい空間表現を研究し始めたころの作品。日本絵画の伝統だった輪郭線を無くし、手前から奥に色彩を淡くかすませ、もみじの空間を表している。 師であった岡倉天心から、新しい日本画をつくるためには日本の伝統的な精神性を大事にする部分を残しながら、西洋の技術を取り入れて、精神性が反映された新しい表現を目指すようにいわれていた春草。同館学芸員の加納向日葵さんは「それまでの日本美術の要ともいえる、線に思いを込めて描くという事を無くしてしまったので、当時としてはかなり新しい表現といえる」と解説する。

 同時期の春草の作品「蓬莱山(ほうらいさん)」は輪郭線を無くし、画面の各所に金や銀を使い描いている。細かな粒状の金泥を他の色彩と重ね用い、淡く薄く霞を描くように画面に入れ統一感を出しながら神秘的な空気を描き出す。加納さんは「ダイレクトに光る金ではないが、色彩表現をリアルにするために、光が当たる『そのもの』を描き出している」と解説する。

 同展の副題は「春草と朦朧体」で、「菊慈童」に焦点を当てた展示構成とする。加納さんは「春草の画業の初期『空間表現』の集大成ともいえる『菊慈童』は若きころの春草の代表作。『秋渓』での同系色をぼかして空間を描き出すことと、『蓬莱山』で使った金や銀を用いて光や雰囲気を描き出すこと、全てが合わさっている作品。空間表現での研究の流れを踏まえて見ると、より作品に近づいてみることができるのでは』と笑顔で話す。

 「この時期の春草の作品は、鑑賞界からの理解が得られず『朦朧体』と酷評されるが、次世代の画家たちに大きな影響を与えた。春草の誕生日=1874(明治7)年9月21日と、没日=1911(明治44)年9月16日がある特別な9月『春草月間』に、若き春草の挑戦とその成果を、作品や資料を通してじっくりとご覧いただけたら」と加納さんは来館を呼び掛ける。

 開館時間は9時30分~17時。月曜休館(祝日の場合は翌日休館)。観覧料は、一般=310円、高校生=200円、小中学生=100円。10月2日まで。9月13日~19日は「春草ウイーク」として、飯田市美術博物館の観覧料が無料になる。

  • はてなブックマークに追加
エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース