家具の販売を行う永井家具店(飯田市上郷別府)が今年で120年を迎えた。創業日は不明。
1905(明治38)年、家具職人・永井源造が飯田市長姫町で創業した永井洋家具店。主に店舗用のショーケースなど、西洋風の家具の製造や修理を行っていたという。1973(昭和48)年10月、2代目・永井順一が永井家具店として上郷別府に現在の店舗を構える。高度経済成長期の影響で一般的な家庭用の家具が多く普及するようになり、事業内容を小売業に大きく転換した。
1991(平成3)年には3代目の永井敬一さんが、2005(平成17)年には4代目の永井進さんが社長に就任。2018(平成30)年、現社長で5代目の永井広登さんが33歳の若さで会社を引き継いだ。
広登さんは、永井家で120年つないできた思いを「重みは感じるが、小さい頃から店にいたので、この仕事をするのが当たり前と思っていた」と話す。「先代が元気なうちに、いろいろ教えてほしい」と思いを伝え、社長を交代したという。現在6人の従業員は、3代目敬一さん、4代目進さん含め全て家族で構成する。「就任時の不安は大きかったが、今は時代が読めない。先代、先々代の知恵を借りながら、今後の展開を考えている」と広登さん。
同店は、父親である先代の時代から家具の量販店が台頭してきたこともあり、安いものは扱わず、ムクの一枚板など、好きな人に刺さるような物だけを扱うようになった。広登さんは「高級家具というより、上質な家具を扱い、量販店との差別化を図ってきた」と話す。昔は180センチサイズの一枚板に需要があったが、最近は家も小さくなり160センチサイズの板が人気だという。「木目が左右対称のデザインや、板の厚みが薄いものなども人気」とも。ムク、ケヤキといった代表的な木材から、クルミ、ヤマザクラ、クリなど他店にはない素材まで、岐阜県高山市の職人に協力を経て作ってもらっている。
広登さんは「長く使えるのはもちろん、長く使うと家族の思い出も入ってくる。実家でも長く同じテーブルや椅子を使っているので、両親が亡くなっても思い出はそこに残っているところがいい」と話す。「古い家具などを修理される方には、そういった思いがある。そんな気持ちをくめるような店でありたい」と意気込む。店ではテーブルの磨き直しや椅子の張り替えなどもリメークも行う。
今後の課題は「後継者問題」と話し、意思疎通のしやすさが家族経営のいいところとしながらも「家族経営から脱することも考えなくては。労働環境の整備など、どんな人でも働きやすい環境を目指したい」と前を向く。「いずれは飯田下伊那だけでというのは限界も感じる。拠店(店舗)を増やすなども考えなくては」と先を見据える。
営業時間は10時~18時。火曜水曜定休。