
土産品の製造販売を行うマツザワ(高森町)が10月2日、農薬取締法により食品利用ができずに放棄されてきた「摘果リンゴ」の2025年の集荷が約80トンになったことを明らかにした。
同社は2010(平成22)年、摘果リンゴを地域独自のアイデアで菓子などの原料として使い始めた。リンゴの摘果は、余分な実を間引いて大きな果実を実らせるための作業。果実の成長には多くの養分を必要とするため、果実の数が多いと大きく実らず、生育不良などの悪影響が生じる。誰もが「もったいない」と思っていても農薬問題から食用利用ができず、そのまま放置されているのが大半だった。
摘果リンゴを同社が製菓原料として食用で使うため、地元の生産者・JAが協力し防除液の種類や散布のタイミングなどを試行錯誤。独自の防除体系と仕組みを作り上げた。リンゴは病害虫に弱い植物で、防除体系を変えることは生産者にとってリスクもあるとされるが、現在は50軒ほどの農家が参加。同社の森本康雄さんは「当初からこの取り組みにチャレンジしてくれた農家の方々には感謝しかない」と話す。全農ではジュースやジャムなどに使われる加工用のリンゴを1キロ当たり20円~30円で取引されているが、同社は摘果リンゴを1キロ当たり50円~70円で買い取る。生産者にとっては廃棄物が資産に変わる新たな成長産業となる。
集荷されたリンゴは主に同社の土産品「りんご乙女」の原料として使われる。同商品は味覚に特化した国際コンテストiTiで2009(平成21)年~2025年までに最高位3つ星を17年連続で受賞。「台湾などからのインバウンド客に人気が高い」と森本さん。同取り組みは2018(平成30)年、農林水産省の「もったいない大賞 審査委員会委員長賞」を受賞した。
森本さんは「創業当時から『もったいない精神』を継続してきた。今後も未利用品の有効活用により、農家の増収を実現させ、地域で暮らす人が安心して仕事に打ち込める環境をつくりたい」と意気込む。今年3月には後継者不足で終農を検討する人から農地を預かり、営農を継続させる取り組みとして農業法人を設立。「土産は地域の農産物からできているので、なくなってしまったら商品が存在しなくなる。微力ではあるが農家の手伝いができれば」と思いを話す。