
飯田市美術博物館(飯田市追手町)で現在、「菱田春草常設展示 第55期」が開かれている。今回の展示から一部の作品を除き、写真撮影が可能となった。
同展示室では、飯田市出身の日本画家・菱田春草の作品を多くの人に親しんでもらうことを目的に、毎回テーマを設けて作品や資料を紹介している。学芸員の小池朋美さんは「今の季節に合わせ、『秋を感じてもらいたい』との思いから、『紅葉、静寂の時』をテーマとした作品を中心に展示している」と話す。9月が春草の誕生月であり命日であることから、通夜に親交のあった画家が寄せ書きをした作品も展示する。
展示には、長野県宝に指定されている「菊慈童(きくじどう)」も含まれる。小池さんは「『菊慈童』は不老長寿の象徴として多くの作家が描いている。春草は、山奥に一人置かれた菊慈童の長い年月や孤独を静かに表現している」と説明する。
会場には絵画や書簡など約20点を並べ、生涯をたどる年表も紹介。晩年に病で伏していた春草が妻の千代さんに託し、兄の為吉さんへ送った書簡も展示。小池さんは「医師から良くない診断を受けながらも家族を気遣う春草の思いが伝わる。千代さんが『そろそろ会いに来てほしい』と最後に書き添えている点も印象深い」と話す。
撮影は動画とフラッシュを除き可能。小池さんは「肉眼で作品を見てもらうことを大切にしつつ、撮影した写真を共有していただければ」と来館を呼びかける。
開館時間は9時30分~16時30分。入館料は310円(9月17~23日は「春草ウィーク」として展示観覧無料)、高校生以下は無料。10月5日まで。期間中の休館日は9月16日、22日、24日、29日。