
「さとりのてらす」旧飯田測候所(飯田市馬場町)で7月13日、明治大学の出張講座が行われた。開催は3回目。
当日は、「ONLY:鹿にしか、竹にだけ 地域資源の新しい可能性」と題し、明治大学建築・アーバンデザイン研究室、修士2年の石川優希さんが講演。飯田の地域資源にフォーカスして研究してきた石川さんは、2022年に研究室が立ち上げた「シカとプロジェクト」に関わり、「しかと」されている南信州の地域資源や課題に焦点を当て、その可能性を広げたり、課題解決の一助になったりすることを目的として、人・モノ・空間などのデザインを研究してきた。
講義では地域課題の一つとして放置竹林問題を挙げ、「竹林は成長速度が速く、全国的にも課題となってる」と話し、その原因の一つとして「竹製品の需要の低下により、竹を使わなくなって放置されてきた」という。竹はウッドチップやパウダーなどにして最終的には土に帰るというメリットを生かし、竹を建材として利用を見いだすことを考えた。建材化に向けた活動として下伊那農業高校と「移動式鳥小屋」を制作したり、竹ベンチの制作を行ったりした。放置竹林問題を知ってもらうのこと目的に、かざこし子どもの森公園(丸山町)でも子どもたちを対象に竹ベンチのワークショップも行った。石川さんは「楽しさを体感してもらうことができた」と振り返る。
一方、鹿については害獣問題を地域課題として挙げ、「今は猟師に鹿を駆除してもらっているが、肉や皮の利用が確立していないため、お金にならないこともが獣害増加につながっている」という。プロジェクトでは2023年に皮職人でなくてもできる「鹿皮のペンホルダー」を実際に商品化した。商品化に際し、地元の人に制作してもらい、新たな雇用を生み出すことも考え、「大きな循環を目指す」という。
講義の途中、10人の参加者がオリジナルの「鹿皮の傘タグ」を作り、実際に鹿皮に触れた。講義を終え、石川さんは「いつもの講座とは違った角度から地域の問題を捉えてもらえたのでは」と振り返る。「大切な何かに気づいてもらうために、鹿にしかない、竹にだけある価値や可能性に着目した」と話し、「ビジネスの可能性として、どう地域に還元されるのかなどを考えながら取り組んだ。南信州だけでなく、ほかの地域にも波及できれば」と先を見据える。
講義を受けた飯田女子高校の熊谷実桜さんは「飯田の大学生ではなく県外の大学生が課題に向き合ってくれるのはうれしい事。そうした大学生に間近に触れ合えるのは貴重な機会」と話す。
次回は8月24日、「動き続ける風景をデザインする」をテーマに信州大学の吉武駿助教授が講義を行う。