
画家、横前秀幸さんの個展「イタリアの小さな村の風景展」が3月14日、長野県飯田創造館(飯田市小伝馬町)で始まった。
1954(昭和29)年に高森町で生まれた横前さんは、小学1年生の頃から現在まで絵を描き続けている。会場には、これまでの作品に加え、ここ1年で描いたイタリアの風景画を含む100点以上が並ぶ。
横前さんは1970年代からヨーロッパやアフリカを訪れ、現地の風景や暮らす人々の営みを画題に制作活動を続けてきた。1989(平成元)年には第74回二科展で「パリ賞」を受賞し、フランスへ派遣された。1990(平成2)年にはフランスの「サロン・ドートンヌ」会員に任命され、建築家・毛綱毅壙(もづなきこう)さんのヨーロッパ巡回展の芸術監督も担当。2014(平成26)年には第99回二科展で内閣総理大臣賞を受賞するなど、多くの受賞歴を持つ。
今回の個展は、長野県飯田創造館の閉館を前に「創造を育ててくれた丘の上の長野県飯田創造館にありがとう」との思いを込めて開催。会場入り口には、小学1年生の頃に担任の先生が話した物語を元に描いたウサギやニワトリ、リスなどの絵を展示。「動物たちにスポットライトを当てたくて、緑色を交差させた」と当時の記憶を振り返る。
高校の美術クラブ時代の作品や、大学で学んだ日本画を用いた写実的な作品、30代に描いたデザイン画など、幼少期から青年期にかけての作品も展示。「構図や色使いなど、今の描き方につながっている」と横前さんは話す。
会場の301号室には、この1年で描いたイタリアの風景画を展示。ブドウ畑が織物のように広がる丘、建物のガラス越しに見える人々の暮らし、教会前で開かれる結婚式など、1日のさまざまな場面を1枚の絵に収めたという。さらに、イタリアでの生活から着想を得たモノクロ作品も並ぶ。「誰もいない寂しさと、日本人ならではの余白の美を画面に生かした」と話す。
「アフリカやヨーロッパの風景を自分の心の中に取り込み、感性でかみ砕き、心の引き出しにしまった思いを描いている。ブドウやレモンなど記憶の中の景色を画面に並べることは、詩を紡ぐような作業」と、作品制作への思いを語る。
開館時間は9時~17時(最終日は15時まで)。入場無料。3月18日まで。