1979(昭和54)年の開館以来、地域の文化芸術活動の拠点として親しまれてきた「長野県飯田創造館」(飯田市小伝馬町)が現在、「スポットライト企画」を開催している。
2024年度末に45年余りの歴史に幕を下ろす同館では、閉館前の最後の展示となる同企画「モザイク壁画と野外彫刻」を開催している。玄関ホールを飾るモザイク壁画「天地創造」は、縦2.6メートル、横4.1メートルの大作で、創造館の象徴的な存在として親しまれてきた。建物の解体とともに2025年6月以降に取り壊される予定。同展示は閉館前の貴重な機会として、多くの人々に創造館の歴史と地域の芸術文化の価値を再認識してもらう場にする。
この壁画は、1979(昭和54)年の開館に向け、陶芸家の水野英男さん、市瀬貞人さん、萩元正紀さん、日本画家の仲村進さん、洋画家の沖今朝昭さんといった地元芸術家たちが図案や素材選びから1年かけて制作したもの。制作には浜井場小学校の児童も仮制作で協力し、その様子は当時の広報誌にも記録されている。同展示では、制作時の写真や資料も公開している。
館内の窓から眺められる「創造の森 風越公園」に点在する野外彫刻も、窓枠を「額縁」に見立てて彫刻を鑑賞できる「野外彫刻ビュースポット」として紹介している。同館の増改築に合わせ、2000(平成12)年に設置された野外彫刻「さきがけ」は彫刻家、城田孝一朗さんの作品。その他に、同館でグループ活動を続ける彫刻家の作品4点も、窓枠を額縁に見立て同館内から眺めることができる。
同館に勤務する主事の加藤房子さんは、開館当初にも職員として25年勤務し、長野県伊那文化会館へ勤務後、2023年度から再び同館に勤めている。「壁画が取り壊される前に目に焼き付けて、忘れないようにしてほしい」と来館を呼びかける。展示期間中、壁画を見上げる親子が「恐竜みたい」「ぐるぐるの模様は何だろうね」などと語らう姿もあり、加藤さんは「作品を楽しむ来場者の姿を見られるのがうれしい」と話す。
同館は閉館後、南信州広域連合が「文化芸術活動支援施設」として、以前の地場産業振興センター(上郷)を整備し、新たな拠点として運営管理する予定。
開館時間は9時~17時。水曜休館。入館無料。「野外彫刻ビュースポット」は1期が2月4日まで、2期は3月27日~30日。モザイク壁画「天地創造」は3月31日まで。