大鹿村に江戸時代から伝わる行楽弁当「ろくべん」を学ぶ勉強会が9月12日、同村で観光関係者を対象に開かれた。
「ろくべん」は同村に300年継承され、国指定の重要無形民俗文化財である「大鹿歌舞伎」の観劇の席など、「ハレの日」に食べられてきた。江戸時代から伝わり、20品目ほどのおかずとご飯を、木製の器に入れて持ち運ぶ。
勉強会は、この「ろくべん」を正しく継承しようと同村観光協会が企画した。村内の観光関係者など10人ほどが参加し、講師から由来や中身など「ろくべん」にまつわる話を聞いた後、調理講習と試食会も開いた。
おかずとして、海のない長野ではイカを塩漬けにした「塩イカ」、江戸時代に貴重とされた練り物の「ちくわ」、各家庭の味が際立つ「煮豆」、保存食でもある「高野豆腐」などを紹介。一方、江戸時代にはなかった冷凍食品や、おかずを仕切るセロハンは「ろくべん」には使わない物として説明があった。
春と秋の年2回上演される「大鹿歌舞伎」では「ろくべん」が販売されていたが、コロナ禍でストップしているという。本来の「ろくべん」を作るには大変な手間がかかるため、コロナ禍前でも「ろくべん」を作るのは難しかったこともあり、同協会会長の平瀬定雄さんが「後輩へ『ろくべん』をつないでもらえるよう勉強会を開いた。時間と手間がかかり、手の込んだ料理を食べる機会が減っている今こそ、ぜいたくな弁当と言える」と話す。
今回の勉強会を生かし、10月に村内で行われる催しで「ろくべん」を食べる企画を予定しているという。平瀬さんは「来春の大鹿歌舞伎で、観劇と『ろくべん』を併せて楽しんでいただける席を用意することを目指している」と話す。