下久堅小学校(飯田市下久堅)の3年生児童21人が12月16日、地域の伝統文化を知ることを目的に下久堅ふれあい交流館(下久堅)で、地区に伝わる「ひさかた和紙」を体験した。
当日は、「ひさかた和紙の会」指導の下、2グループに分かれ、紙料となるコウゾの皮をむく「たくり」作業と、専用の道具を使って「紙すき」に取り組んだ。
「たくり」では、コウゾの茶色の表皮を「カビかき」で丁寧にきれいに剥いていき、「紙すき」では、原料繊維の入った「すき舟」と呼ばれる水槽に「桁(けた)」と呼ばれる木枠を入れ、原料繊維をすくい前後・左右に振りながら生地を均等に伸ばす動作を4~5回、繰り返した。すいた紙は、吸引機で、ある程度、水分を吸い取り、ステンレス板の乾燥機で45分ほどかけて乾かすという。
同地区では、江戸時代後期から飯田下伊那地域の地場産業である元結、水引、和傘、ちょうちんなどの紙産業を支える和紙として、盛んに紙すきが行われていた。1961(昭和36)年の大規模水害「三六災害」の影響で、ひさかた和紙の生産は大きく減少したが、和紙づくりを地域の伝統文化として残そうとの機運が高まり、1996(平成8)年、かつて紙すきを経験した地域住民や公民館を中心に「ひさかた和紙保存会」が発足した。
現在は、同保存会を母体とする「ひさかた和紙の会」が、原料となるコウゾやトロロアオイの栽培から紙すきまで、一連の和紙作りを伝える活動を実施。2019(平成31)年に新しく地区内に整備した和紙作りの拠点「下久堅ふれあい交流館」では、年間を通して和紙作り作業を体験することができる。
紙すき体験をした同小3年の石黒晴稀君は「薄くても紙が破れずにできて良かった」と振り返った。同小では1・3・5・6年生が毎年、紙すき体験を行い、6年生の卒業証書は、児童が自分の手ですいた紙を使っている。