特集

「南信州環境メッセ2024」今年の注目は「水素」

  • 9

  •  

11月23日・24日にエス・バードで開催する「南信州環境メッセ2024」について、実行委員会の中島睦夫委員長、菅沼利和副委員長、島田洋二副委員長の3人に話を聞いた。インタビュアーは飯田エフエム放送の木下寛章。

「木下 飯田下伊那地域で4年目の開催となる「南信州環境メッセ」ですが、改めて趣旨やテーマを教えてください」

中島・・・この環境メッセは、ゼロカーボン活動推進見本市ということで、「リニアとともに地域がにぎわう環境先進地を目指して」というテーマで開催をしてきました。リニアの開通が少し延びてしまったことは大変残念ですが、テーマや趣旨からは外さずに、地道にそこを目指したいと思います。地元企業の環境技術の開発や産業振興、産業人材の育成を図るとともに、この地方にある産業を地域の皆さんに知ってもらい、若い人たちが、そこで働いてみようという気持ちになっていくのが一番いい形だと思います。

「木下 当イベントは出展する企業やこの地域のSDGsや環境に配慮した取り組みをしている高校生、中学生の皆さんの発表や展示などもあります。環境に対して、さまざまな活動をしている皆さんが一堂に集まるというところでは大規模なイベントになっていますね」

中島・・・今年は特にこの地域をけん引してきた多摩川精機さんや旭松食品さんなど、工業界、食品産業のリーダー的な企業も出店するので大変期待しています。小・中・高校生も環境に関心を持ってもらうことで、そうした企業で働いて飯田下伊那を盛り上げていくことにつながっていけば、10年先にはおそらくリニアも開通すると思うので、一つ一つ積み上げていきたいと思います。

「木下 今回の環境メッセの注目点や例年と違った取り組み、変更点などがありましたら教えてください」

島田・・・信州大学のグリーン水素ですね。信州大学アクアリジェネレーション機構が光触媒を使って新たな水素を作る新しい取り組みです。信州大学として初めてこれを説明するブースを開き、先端の技術を紹介することになっています。これが一番の注目に値するの変更点ではと考えています。

「木下 今回一つキーポイントになりそうなところとしては『水素』ですね」

島田・・・水素についてはモデル的な試験場はできていますので、それを基にして、さまざまな問題はあるかもしれませんが、効率よくできるような研究がここエス・バードにできるのではと思います。先行投資を狙うのも環境メッセの狙いでもありますし、この地域が長野県の環境技術の拠点になるのではと期待しています。

「木下 飯田市としてもゼロカーボンシティの実現に向けてさまざまな取り組みを行っていますが、民間や行政の取り組みの進捗(しんちょく)はどのような感じでしょうか?」

菅沼・・・飯田市は脱炭素先行地域にも指定されています。着実にゼロカーボンに向けて取り組みを進めているという状況です。高森町でも同じような重点加速化事業を採択され、今精力的に取り組んでいるところです。目指すゴールは2050年ゼロカーボンという動かせない目標があります。計画としては2030年に「どのくらいになってたらいいな」という中間計画は持っていますが、それを達成するには少し足りない状況ではあります。再生エネルギーを増やしたり、省エネでエネルギーの収量を下げたりしないと2050年ゼロカーボンはまだまだ遠いということです。

「木下 企業や行政だけではなくて、市民の環境意識の向上もポイントになると思うのですが、これからの環境産業の展望という意味ではどのようなことをお考えですか?」

中島・・・島田さんの話にあった「水素」。これは全く新しい技術なので、こういったものを少しずつ地元の企業が一緒に研究に参加させてもらうなど、企業が産業として育てていけるような土壌をこの地域で作っていくことができればいいなと思います。将来、この技術が世界で認められる技術になると思っていますので、大きく育つといいなと思います。

島田・・・少し観点を変えて話します。今年の正月に能登半島で大きな地震がありました。中山間地の村などは孤立してしまっていますよね。そういう時にエネルギーというものが非常に重要になってきます。場合によっては、この飯田下伊那もエネルギーを分散するというのは、これから言われてくるのではと思います。今までのようなラインで一本での供給ではなくて、地域で小水力やバイオマス発電などで分散していくことが求められるのではないかと思います。今後、それに関する技術は新たなものが出てきても非常に面白い方向に育つのではないかと思います。実際に小水力発電は野底山森林公園でも行っていますが、徐々に整備が整ったところから実現しているような感じですね。特に、この中山間地の一軒、二軒だけの地域ならインフラ整備するよりも、太陽光以外にも身近なエネルギーを使うというのは可能性が非常に高い気がします。

「木下 菅沼さんは小水力発電に関わっていますが、いかがですか?」

菅沼・・・水素をこれから利用するとか、「ペブルスカイト」など、本当の物理太陽光発電の設備が今、開発されようとしてますが、それは今後の技術革新の期待として一つ持っている中、一方では今の技術をいかに上手に使って地域の中に残していくかというのも、非常に大きな課題です。島田さんの話のように分散型で、小水力発電など今ある技術を普及させることで安価なエネルギーが作れるというのが目指していくところかなと思います。

「木下 最後になりますが、「南信州環境メッセ2024」に向けてのメッセージをお願いします」

中島・・・今、話に上がった技術を組み合わせながら、エネルギーコミュニティーあるいはエネルギー自治とも言われていますが、各地域でそれぞれ工夫しながら、自分のところの電気は自分のところで、エネルギーは自分ところで作るんだというようなことも含めて、もう一度その地域のつながりができていくと、本当に循環型の地域社会ができるのではないかと期待を持っています。改めて、この時代に即した環境技術をこの地で作っていく、そのきっかけに環境メッセがあればいいなと思っています。

島田・・・これからこの地域が環境技術を元に世界に売って出るという、ちょうどステップアップする事前段階だと思います。リニアの遅れも問題ではありますが、今がちょうどいい、ちょうど良かったかなぐらいの気持ちで実行してみたらどうかと思います。環境に情熱を持っていれば前進する可能性は非常に高いので、ぜひ多くの皆さんに来てほしいと思います。

菅沼・・・いろいろな方々がいろいろな観点で取り組みをしているので、ぜひそれを体験してほしいです。今年は、「おひさま進歩エネルギー」のブースでLEDの電球を無償で交換する取り組みをします。省エネが一番簡単にできるのは白熱球や蛍光灯をLEDに変えることです。電球や白熱球1個を持ってきていただければ同じように使えるLEDと無償で交換しますので、ぜひ自宅で体験してほしいです。

「木下 11月23日・24日の10時から16時まで、飯田市座光寺のエス・バードで「南信州環境メッセ2024」を開催します。当日は、ブース出店だけではなく、飲食コーナーやキッチンカーの出店などもあります。そのほか、さまざまな体験や学習、イベントなどもありますので、この機会に身近に環境を感じていただき、今、自分自身で何ができるのかというところも知るきっかけにしていただければと思います。実行委員長の中島さん、副委員長の島田さん、菅沼さん、ありがとうございました」
  • はてなブックマークに追加

ピックアップ

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース