下久堅小学校(飯田市下久堅知久平)の6年生の児童が12月17日、ひさかた和紙の里紙屋(同知久平)で「ひさかた和紙」の紙すき体験を行った。
下久堅の和紙生産の歴史は、元結の生産が盛んになったことから始まった。明治時代には下久堅村の平沢与一村長が村の産業として推奨し、7割以上の世帯が紙を生産。「全村紙すき村」と呼ばれることとなった。その後、洋紙の普及、1961(昭和36)年の三六災害(梅雨前線豪雨)による被害で和紙作りは衰退。
現在、「ひさかた和紙」の文化を残そうと「ひさかた和紙の会」の会員約80人が文化の継承を担う。同校では全学年が毎年、紙すき体験授業を行う。5、6年生になると、自分の卒業証書の紙すきを行う。同会の松本富雄副会長は「6年生ともなると落ち着いている。この体験をいい思い出として、いつまでも子どもたちの記憶の中に残ることで、この地域の文化として残すことができれば」と思いを話す。
当日は6年生の児童23人が紙すきを体験。1人10分~15分、児童たちは真剣な表情を見せ、小学校の校章を入れた「ひさかた和紙」を自らの手ですいた。原料となるコウゾの皮をむく作業なども手伝った。尾曽一翔さんは「昨年より、いいものができた。学校生活はいろいろあったけど楽しかった」、齊藤さらさんと佐藤優月さんは「上手にできたと思う。今年作った紙を卒業証書にしたい。貴重な体験ができた」と、それぞれ感想を話していた。
6年生担任の塚田美花教諭は「2回目ということもあり、上手になった。表情も柔らかく、下久堅の子どもたちにとって身近な紙すきを楽しく取り組めた」と振り返る。「私の手から児童に卒業証書を渡すことになる。こんな体験はできない」とも。
完成した和紙は乾燥させた後、椚谷(くぬぎたに)博校長が児童一人一人の名前を書き、卒業式で担任の塚田教諭から児童一人一人に渡す。