飯田市出身の昆虫画家・北原志乃さん(故人)の創作活動を紹介する「北原志乃特別展」が11月15日・16日、上郷公民館(飯田市上郷別府)で開かれる。主催は上郷地域まちづくり委員会の公民館部会で、上郷文化祭の一環で行う。
北原さんは1967(昭和42)年、飯田市上郷生まれ。飯田高校卒業後、弘前大学農学部園芸学科応用昆虫学教室で昆虫学を学んだ。学生時代には「卯月藍」名義で「週刊モーニング」の『ちばてつや賞』に応募し、作品が掲載されたことをきっかけに漫画家としても活動。その後、昆虫画や科学書の挿絵の制作に取り組み、岩波書店「広辞苑」第六版には昆虫画55点が採用された。昨年3月に亡くなり、今回の展示は遺作を整理・紹介する機会となる。
同展の開催を発案したのは、上郷南条分館長の細田道夫さん。10年ほど前、地域の作品展で北原さんの絵に出合い、「心を奪われた」と振り返る。ファンとして作品を追っていた中で、訃報とともに「遺族が作品の整理を始めた」と知り、「このままでは重要な作品も見過ごされてしまうかもしれない」と危機感を抱いたという。「人の目に触れずに終わるには惜しすぎる」との思いから、展示企画を立ち上げた。
北原さんとは面識がなかったが、遺族に作品整理の手伝いを申し出たことをきっかけに交流が始まり、展示準備に取りかかった。作業は約1年に及び、段ボールに収められていた原画や資料を分類し、時系列で整理。細田さんが自ら制作したパネルは65点に上る。現在も遺族との交流は続いており、「地域に根ざした展示」として形になった。
展示では、広辞苑用の昆虫画、児童書「黒姫ものがたり」や絵本「テントくんシリーズ」の原画、学術書の挿絵、制作過程の修正原稿、関係者との書簡など100点を超える作品・資料を紹介する。
北原さんの母・房子さんは「娘の作品を多くの人に見てもらうきっかけを作ってくれた細田さんには感謝の気持ちでいっぱい。最近はスマートフォンなどの画面越しに絵を見る子どもも多いかもしれないが、実物を見てほしい」と話す。
展示終了後は、作品の多くを上郷図書館に保管する予定で、細田さん作成の紹介パネルも寄贈する。来年2月には同館での再展示も検討中だという。
文化祭の開催時間は、15日=12時30分~16時30分、16日=8時45分~16時。