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阿智村に「駄菓子菓子」 フランスなどで修業重ねたパティシエが開業

パティシエの関瑞穂さんとホール担当の塩澤苑香さん

パティシエの関瑞穂さんとホール担当の塩澤苑香さん

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 国道153号沿いで焼き菓子やパンを提供するカフェ「駄菓子菓子(だがしかし)」(阿智村浪合)がオープンして、8月12日で1カ月がたった。

「駄菓子菓子」の中央に飾られたバラ

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 オーナーパティシエの関瑞穂さんは千葉県出身。建築の仕事を目指していた20代の頃、建築を学ぶためのイギリス留学資金をためるために始めたフランス料理店でのアルバイトをきっかけに、料理の道へと進んだ。前菜の調理や包丁を使う細かな作業に楽しさを感じ、仏パリの製菓専門校に留学。研修を重ねた後、当時3つ星レストランだった「タイユヴァン」やフランス南部の店などで3年半、パティシエとしての経験を積んだ。

 帰国後はスペイン料理店「サンパウ」(東京都千代田区)に勤務。同店で出会ったフランス人シェフの紹介で、スペイン政府が行う料理研修プログラムに応募し、全国で2人のうちの1人に選出。2009(平成21)年には、当時「世界一のレストラン」と評価された「エルブジ」で働いた。関さんは「まるで手品のように仕上がる料理を目の当たりにした」と振り返る。

  その後、日本料理の3つ星レストラン「龍吟(りゅうぎん)」で日本文化や食材を重視した調理に触れ、料理の意味や背景を学んだという。同店で知り合った夫が海外進出1号店として香港店を任されることになり、関さんも同行。初めて自分の発案でデザートを提供する機会を得て、「お客さまの反応を見て、初めて自分の料理に自信が持てた」と話す。

 料理の道を歩んで10年ほどがたった頃、「アジア女性料理人」10人の1人として、国際女性デーで表彰された。「やってきて良かったと思えた瞬間だった」と話す。

 コロナ禍をきっかけに2019年に帰国し、2021年からは家族で阿智村へ移住。「香港では小さな公園に多くの子どもが集まっていた。もっと広い場所で育てたい」と、山村留学制度がある同村を選んだ。

 移住後は「信州平谷温泉 ひまわりの湯」(平谷村)にプリンやマカロンを卸し、「森の駅ネバーランド」(根羽村)でたい焼きを提供する傍ら、独学でパン作りにも取り組んだ。「集中してパンを作ることが面白く、楽しかった」と語る。

 開業に向けて物件を探していたところ、「旅館あさひ」がリニューアルするタイミングで、かつてカラオケ店だったスペースを借りることができた。蔵の解体時に出た建具や家具を再利用し、アンティーク調の内装に改装。カウンター席とテーブル席を備えた落ち着いた空間に仕上げた。

 メニューは、カヌレなどの焼き菓子を中心に約7種類。京丹後の酒屋から仕入れる酒かすを使い、2日間寝かせた発酵種でスコーンを作る。白い酒かすは「ブルーベリースコーン」、3年寝かせた茶色の酒かすは「アーモンドとデーツのスコーン」に仕上げるという。

 8月16日には地元の「丸柏農園」とコラボし、地元産野菜を使った「ホットドッグ」を初めて販売した。同園を夫婦で営み、駄菓子菓子のホールを担当する塩澤苑香さんは「標高1000メートルの畑で育った味の濃い野菜を楽しんでもらえた」と話す。ほかにも浪合産のトウモロコシを使った「ジュスティック」や、「アイスティー」「クラフトコーラ」「ドリップコーヒー」などドリンクは10種類ほどをそろえる。

 関さんは「帰国後、子ども主体で田舎暮らしをしたいと考えていた。初めて阿智村を訪れた時は、標高が上がるにつれて、『この先に人が住んでいるのか』と不安になったこともあった。他にはない特別な空間で、丁寧に作った菓子を味わい、訪れる人のお気に入りの場所になれば」と来店を呼びかける。

 営業は水曜・土曜の11時~17時。

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