
設計事務所「rita design architect 鈴木設計室」(飯田市正永町)が開業して、6月1日で1年がたつ。
代表の鈴木利也さんは根羽村に生まれ、森林組合に勤める父親の下、幼い頃から山へ入り、伐採やシイタケ栽培などを手伝い、大工の真似事をして遊んでいた。そんな生い立ちから、地産地消や環境、ものづくりに対する興味が膨らんだという。鈴木さんは「生れ育った根羽村に立つ樹齢1800年の『月瀬の大杉』が建築人生の原点の象徴」と話す。2023年12月に18年ほど勤めた「新井建築工房+設計同人NEXT」(飯田市松尾代田)を退職し、2024年6月、自宅で開業した。自宅は前職に在職中、休みを使って自分一人で設計し、妻が勤める大蔵建設(丸山町)が工事を請け負った。
建築士の仕事は、建物の設計をして建物ができるまで現場で管理すること。施主とのコミュニケーションを大切にし、希望を現場に伝え、設計図どおりに進んでいるかを監督する。いわば「施主の代理人」と表現する。「ハード的な仕事だけでなく、住まい手の思いから、さりげない気遣いや建築的工夫、人やまちづくりまで、大きな解釈で『ディテール(細部)に神は宿る』という言葉を大切にしている」という。師匠の「下請けはやるな」という教え通り、「設計事務所として自分の色を出したい」と鈴木さん。「図面を書かないか?」という依頼も来たがかたくなに断ってきた。事務的な仕事は一切行わず、「建築一本で頑張ろう」と意気込む。
開業して1年がたつ現在、保育園の増築など3件ほどの仕事が進行中だという。「厳しさを目の当たりにしているが、これまで培ってきたさまざまな人脈のおかげ。ようやく設計事務所らしい仕事が始まったところ」と話す。「rita」の名称は、名前の「利也(としや)」から仏教的な禅の思想「利他(りた)」と結び付けた。「利己的な建築ではなく、景観、環境、人、住まい手の感性も利他的な心に変っていけるような建築を心がけたい」と話す。ゆくゆくは「りたさん」と愛称で呼ばれたいとも。「建築に関わることなら何でも相談してほしい」と呼びかける。